2012年3月24日■産経新聞オピニオン面「金曜討論」で「SNS社会」についてインタビュー 印刷
作者 junpay   
2012年 3月 24日(土曜日) 00:00

  産経新聞2012年3月23日オピニオン面「金曜討論」で「SNS社会」の特集が組まれ、意見を述べさていただいた。私の方は、SNSに対してネガティブな見方を、 一方のポジティブな見方は慶応大学教授の中村伊知哉氏が述べている。以下、そのインタビューの全文を掲載する。

《記事のリード》

  フェイスブックやツイッターなど、会員制交流サイト「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」の利用者が増加している。人脈を広げるメリット が注目される一方で、個人情報流出などマイナスの側面も指摘されている。SNSの可能性を高く評価する慶応大教授の中村伊知哉氏と、プライバシーの消滅を 危惧するジャーナリストの山田順氏に話を聞いた。

  

《山田インタビュー部分:見出し「冗談許されず息詰まる」》

 --日本のフェイスブック利用者が1千万を超えたと報じられた

 「まず注意すべきは、この場合の利用者(アクティブユーザー)が、 1カ月に1回以上ログインした人間をすべて数えた、かなり緩い基準の数字であることだ。毎日ログインするような利用者は、ずっと少なくなるだろう。急速に 普及しているのは確かだが、実態は割り引いて考える必要がある」

 ●“世界と交流”は幻想

 --SNSサイトを通して、全世界の人と交流可能になった

  「それは幻想だ。たとえばフェイスブックの出発点は、米ハーバード大のエリート学生を中心とした学内交流サイトだ。その後、他の米名門大、全米の大学、全 世界と、段階を踏んで公開範囲を広げてきたが、一貫した利用目的は同一階層間での交流だ。全世界に開かれたネットワークといっても、中心は圧倒的に英語圏 で、ハーバード大卒業生を頂点として階層化された閉鎖的な人間関係の輪が無数にあるだけだ。自分たちと属性の違う人間は、基本的に輪への参加を承認されな い。現実世界の階層をネットに移し替えただけの構造で、世界中の人と友達になれるという甘い夢は通用しない」

 --個人がより自由に情報発信できるようになった

  「それが情報過多につながる。無数の人が発信する大量の情報の洪水の中では、個人は一つ一つの情報を精査できず、結局、判断停止状態に陥る。すると結局、 みんながいいと言っているものに便乗する“バンドワゴン効果”が生じる。多くの人が見ている、いま流行しているということが唯一の判断材料となるわけで、 一握りの有名人に人気がより集中する」

●プライバシー丸裸に

 --登録は無料だ

 「無料といっても、SNSを運営するのは営利企業で、慈善団体ではない。無 料は集客に必要だからだ。収益源となるのは広告収入で、それを生むのが膨大に集まる登録者の個人情報だ。近年ネット広告にからむ技術は飛躍的に進歩してお り、利用者の性別や学歴、年収などの属性情報にとどまらず、ネット上で何を調べ、何を買ったかという行動データが広告産業にとって重要になった。今やネッ ト上のすべての行動は“丸裸”になっており、オンラインにいる限りプライバシーはない。それがSNSが進展した社会だ」

 --SNS社会は幸福か

  「現実社会のプライバシーは、SNS社会が進展すると通用しなくなる。酒場なら笑って終わる放言も、SNSでは“炎上”してしまう。人間関係や日々の行動 が監視され、品行方正で嘘やおふざけが許されない息詰まる空間が形成されつつある。手放しで賛美できる状況ではない」(磨井慎吾)

最終更新 2012年 3月 30日(金曜日) 23:59